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FakePlasticTree

ひびのいろいろ

変光星

夏休みに読了した書籍。確か購入したのは学会会場であった。1年前だったと思う。ずっと積ん読された書籍の中に混じっていて読む機会を失っていた。何故もっと早く読まなかったんだろう。というのが今の正直な感想。

この書籍は森口奈緒美氏の自伝。この変光星は自身の幼少期から中学までの記録を克明に詳細に記したもの。本書も読めばだれも気づくことだが、その場面描写がもの凄い。いくら自分の成育史といっても、これほどまでに詳細に生き生きと描けるというのは驚嘆に値する。よほど作者の知的能力が高いのだろう。しかし特性故の苦しさなのかもしれない。というのは自分のことをこれほどまでに克明に記述できたら忘れたい思い出も忘れられないだろう。生傷が生傷のままずっと永遠に残ってゆく感覚なのかもしれない。そんな苦労を改めて感じてしまった書籍であった。

タイトルの変光星とは以下のような由来からくるらしい。

これまでにも、どの学校に転校しても、数日もすると「変な転校生が来た!」ということで有名になっていた。そんな自分を「変な転校生」という意味で、ずっと「へんこうせい」と呼んでいた。 (P175)

自分のことを”へん”と考える少女は苦悩の末、自分の中に閉じこもってゆく

常日頃からオーバーアクションだった私にとって「へんさ」を自覚し始めたころ、「性格をよくする」ということはまず、努めて自分を抑え「おとなしく」なることを意味した。 (P271)

しかしそうすればそうする程に周囲との軋轢(一方的な虐め)はエスカレートし本人はますます傷ついてゆく。この辺の記述はちょっと読んでいていたたまれない。

私は「死ね!」と言われるたびに、まずそれをローマ字にし、続けてそれを英語読みにするのだった。「Shine! Shine! Shine!」「輝け! 輝け! 輝け!」 学校で一日当たり何回”輝け!”と言われたか分からない。 (P229)

こんな風に自分で考え乗り越えようと努力する様は感動的ですらある。知的能力も相当高いのだろう。よくぞ生き残ってくれたとさえ思う。

そして作者は時々煌めくような核心をつくようなことを記す。それは

しかしもし「育て方」に問題があるとすれば、悪いのは”酒呑童子”の父親であって、母親ではないように思えた。「父原病」という対語がないのが不思議だった (P178)

という一文であったり、以下のような言葉に現れる。

自分の国の政府のやりかたに反対する人たちが、公立の学校の先生として、公費をもらい。そして国家に反対する思想を、公然と授業で生徒たちに教えていたのである。そんな「国」が他にあるだろうか (P139)

こんなことが色々な場面であったのだろう。それをはっきりと的確に言ってしまう場面もあったかもしれない。そう思うとやっぱり生きづらいのだろうな。と確信してしまう。作者の以下のような言葉にその全てが現れている。

私にはいわゆる勉強以外にも、学んでいかなければならないことがありすぎたし、それらを「普通学級」の仲で、すべてを自力で成し遂げなければならなかった。「普通学級」か「特殊学級」。その「中間」がない (P269)

これは作者が小中学生を過ごした1970年代から現在までさほど変わっていない状況のようにも思う。