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FakePlasticTree

ひびのいろいろ

世界の果ての子どもたち

テレビの画面の中で双方泣き崩れて抱き合い再開を喜ぶ場面が、繰り返し放映される。昭和40年代生まれの自分にとってそれが中国残留孤児に対してもつ印象だ。季節の何度かはそんな場面が放映され、年月が経つにつれてそんなことも少なくなっていった。再会ができず、そのまま中国に帰る人もいた。今のようにDNA鑑定なんてまだなかった時代だった。再会できる人々はあまり多くなかったような印象がある。手がかりもあまりないような人々が多かった。

本書は中国残留孤児と、空襲で孤児になった女児、そして在日朝鮮人。3人の少女たちの物語。

3人は少女であったある時期に同じ空間で時を過ごす。その場所は満州だ。幸せな時代とその後の地獄。しかし強くしなやかに生きてゆく。そして再び日本での再開。おそらく同時代を生き抜いた人々は同じような体験を数多くしているだろう。こんな人生が幾万とあるのだろう。

自分の祖父母も同じく戦中は満州にいた。その祖父母はとにかく中国びいきだった。ソ連のことはとっても憎んでいたが、中国の人々には感謝をしていた。中国残留孤児の報道を見ながらも「中国の人々のお陰でこの人たちは生き延びれたのだ」とか、そんなことを僕に教えてくれた。

人々は必ずも優しい面だけではない。冷徹で自分勝手で残忍な面も多く内包する。逆の言い方もできるだろう。しかし人間は誰かに自分の存在を認められたという経験、そんな経験が僅かながらでもあれば、その後の人生を生きてゆくことができる。そんなことをしみじみと感じさせてくれるような良書だ。

電車の中で本書を読みながら少しだけ泣いてしまった。そんなしっとりとした良い書籍であった。