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FakePlasticTree

ひびのいろいろ

大事な人はいつも偶然に刻まれる

日常

高橋君は僕の高校の友人だった。

高橋君の眼鏡はたいそう変わっていた。

右の眼鏡のガラス(レンズ)は割れていた。割れたレンズがセロハンテープでつなぎとめてあった。それはいかにも当然のごとく脆くて今にも粉々に砕けそうだった。そしてそれが眼球に突き刺さりそうな危うさもあった。

眼鏡の左のフレームは折れていた。そのフレームもガムテープで止めてあった。左の耳から今にも眼鏡はずれ落ちそうだった。というか現実的には外れ落ちていた。

頭は常にくしゃくしゃで伸び放題。髭も殆ど剃っていなかった。1970年代の少年漫画に出てくる浪人生のような出で立ちであった。彼は異常なほどに本が好きで授業中でも一心不乱に本を読んでいた。授業は全く聞いていなかった。だから成績はものすごく悪かった。常に留年の危機と闘っていた。

だから苦悩に満ちあふれ常に頭を掻きむしっていた。「どうしよう」といいながら、「ひゃー」という言葉にもならない声を発しながら頭を抱えていた。詰襟の学ランは常にフケだらけだった。

そんな彼が僕は大好きでいつも休み時間といえば彼の側にいきたわいのないことを喋っていた。夏休みなどは赤城山に財宝を探す旅に出たりもした。結局何もしなかったようなものであったけど。

皆が受験で焦り始める時期でもそんなことはお構いなしだった。唐突に「俺は冒険家になる」とか言い出して学校にも来なくなっていった。結局担任の先生に居酒屋に呼び出され説教をされて再登校するようになったけれど。、

その後彼が冒険家になったかどうかは全然分からない。でも高校を卒業して20年以上が経過して俺にもそんな友人がいたのだ、とふいに通勤電車の中で思い出しなんだかとっても幸せな気分になれた。と同時にちょっとだけ泣きそうな気分になった。あの時代はもう絶対に戻らないのだ。