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FakePlasticTree

ひびのいろいろ

今年読んだ小説の中でピカイチ【書評】星々たち

星々たち
桜木 紫乃
実業之日本社 ( 2014-06-04 )
ISBN: 9784408536453

僕は桜木紫乃に魅せられる

以前から僕はこの著者(桜木紫乃)の紡ぐ物語が大好きだった。筆者の著作を読了する度にその魅力の虜になる。もはや中毒といっても良いぐらい。著者が語る物語はある程度年齢を経なければ分からないのではないだろう。人生を『白か黒か』で論じるような年代や人々にはおそらく受け入れられない物語。いかにも東洋的な暗い昭和の香りのする、シルクのように繊細な物語。日本人に極めて親和性の高い物語だろう。一貫した哲学、文学の1ジャンルのようなものが著者の作品群の中に息づいている。

本作は切なく生きる女性の物語

本作は短編集のように幾つかの物語で構成されていてそれぞれが異なる人物の視点で描かれている。しかし全体を通してみると筋の通った1つの物語となる構成となる。全体を通した物語の中心となるのは千春という女性。千春を中心とした女性の3世代に渡る物語。桜木氏の他の著作と同じく千春の生い立ちも不幸。そしてやはり居住する場所は北海道。それも札幌でなく道央や道東など経済的にも恵まれない土地で何とか生き残る人々を描く。

このどうしようもない不幸な生い立ちの中,未来へ希望もなく必死に泥臭く生きる姿が何故かとてつもなく心に響く。

響くというより染み渡るという感じか。『星々たち』という表題の意味は物語の終盤になってやっと明らかとなる。そしてその意味を知ったとき温かい涙が流れる。全てのものを許したくなるような涙だ。

どんな人生でも母親は母親。そして最後は母親だよな、ということをしみじみ。冬の季節にしっとりと味わうことのできる小説だった。個人的には今年読んだ小説の中でダントツピカイチの作品。

中年以降の人々に是非勧めたい。