FakePlasticTree

ひびのいろいろ

【書評】男性漂流 男たちは何におびえているか

 生きていくこととは絶えず何かを諦めるということなのだ。

 20代の頃、僕は良く自由に空を飛べる夢を見ていた。『これは自分にはまだ可能性があり、どうにだって変化できる』という想いが無意識のうちに表れたものなのかと考えている。しかし年齢を重ねるにつれてドンドン選択肢が狭まってゆく。どうしたって人生に選択をしなければならない。就職だって結婚だって子どもを作ることだってすべて選択して行うことのひつだし、選択するためには結局何かを捨てなければならない。捨てる、選択するという作業の裏にはどうやったって諦めがある。

『諦める』という言葉の語源は『明らかになる』ということなのだそうだ。そう考えれば、年齢を重ね分別が出来、自分を客観的に見ることが可能になることにやって『諦める』境地に至ることはそんなに悪くないことなんだろうなと感じる。

本書には色々な男性が登場する。どれも著者が数年にわたってインタビューを行ってきた男性ばかりた。婚活、仕事、介護、アンチエイジング、子育てなどに奮闘する男性達の気持ちの移り変わり。男の哀しさが描かれている。男のカッコ悪い部分がこれでもか!というぐらいに登場する。そして時間の経過とともにそれぞれが『諦める』道を選んでゆく。

 時間を巻き戻すことは不可能だ。人生において疲れ、傷ついた心を時の経過によって癒されながら、幾多の困難を乗り越え、人間としての厚みを増してきた人も多いのではないだろうか。

本書に出てくるこんな一文がどこか心に響く書籍だ。絶望的で辛い内容が多い内容だか、それだからこそ心に響く書籍なのだろう。